自然と環境
自然と人とのつながり③江戸のリサイクル
リサイクルというと、私たちは不用品の再利用という意味のリサイクルを考えがちです。ところが、江戸時代のリサイクルは、大きな自然の循環によって成り立っていました。
代表的なものは、稲作です。田んぼで作った米は備蓄分と種もみ分を残して食糧にまわしました。食糧として人間のお腹に入り、体内にエネルギーとして吸収された後は排泄されます。
この排泄物が、江戸時代のもっとも重要な肥料として重宝されました。
米を脱穀したあとにワラが残りますが、これも徹底的に再利用していました。半分は家畜小屋の堆肥になり、残りがわらじ、縄、蓑などの日用品に、あとは燃料などに使い道があったのです。
さらに、燃料として使った後のワラ灰も肥料として利用し、大地に返すという徹底ぶりでした。
江戸の町では、それらのリサイクル品に値段がつき、商売になりました。有機肥料や灰を集めてまわるその人達のことを「下肥え取り」、「灰買い」と呼びます。
特別な設備もエネルギーも不要、ただ集めるだけで、チッソやリン等が豊富に含まれた有機肥料として、再利用されていたのです。
町で集めた肥料は、農家の人々がそれらを再び田畑に撒き、次の年の農作物を確保するために使用していました。生活するうえで、無駄なものは一切、発生しない形態です。
ずいぶん単純に感じますが、そこにはもちろん巨大な埋立地や、環境汚染、危険な原子力発電所の存在は皆無です。
自然と当時の人間とは、生活の一部として相当深くかかわっていたようなのです。生活は自然があるから成り立ち、自然もまた、人の生活を受け止め、やさしく恩恵を与えてくれていました。
江戸時代の人々は、自然との共存といった形式で、循環型の生活を確立できていたのです。