家づくりコラム

空間設計・間取り

☆リビング編☆

居間で何をするのですか?

家族といたいとき何をしますか?

テレビは皆で見るのですか?

どうも、設計をするときに不思議に思ってしまい、必要以上に聞いてしまいます。設計士として恥ずかしい話なのですが、居間という単語には今ひとつ、なじみが無いのです。

なぜなら、古い農家の自宅には畳敷きのテレビの部屋(家族はテレビの部屋という)はあっても、居間と呼んでいる部屋はなかったからなのです。

因みに、辞書で調べるとこう書いてあります。

【居間(いま)】:家族がふだんいる部屋。居室(きょしつ)。」「家族のだんらん・くつろぎを目的とした単位空間」

おそらく「家族の団欒の場」という抽象的な「居間」のイメージが、自分自身が育った生活環境からは感じ取れないのかもしれません。

家族が多かったせいもあるでしょうが、例えばテレビの部屋はあっても皆、コタツのある別々の部屋で見ていました。台所(「ダイどこ」と呼ぶ)は家族のだんらんの場では有りません。食事を作って食べるところです。

十年前、学生だった頃に親が新築した今の家も、設計士さんが「居間」といった部屋を作ってくれました。

家族全員が、その意味がわからないままです。

実際に暮らしてみると、暖房するのがもったいないので普段、誰もいません。実際、今でも食事をするTVのあるダイニングあたりが、家族の集まる唯一の場なのです。

家族のありかたって一体?

世間一般の「家族の団欒」や「会話」というイメージ自体が、幸せな生活の意味そのものとごっちゃになっているような気がします。

そもそも『家族』という言葉は、いくつかの「個人」が「家族」という箱に入っているイメージが残っているように思います。その中心にある「居間」のイメージも同じです。

インターネットや携帯電話の時代がきて、時代が個人のプライバシーを重視するようになって、家族のありかたって本当にあるのか、ますますわからなくなってきました。

同じ家に住んでいながら個室に閉じこもって、容易な外部との通信に固執し、犯罪に巻き込まれたり、自殺してしまったり・・・もうそんなニュースを聞くのはうんざりです。 

しかし、昔から「家族」といったものは、どこの家でもそれほどベタベタとはしていなかったと思っています。

とりつくしま

頼るところがどこにもない、といった意味の「とりつくしまがない」といった言葉があります。

あらゆる形の外部社会をもつ個人(子供も含めて)の 「取り付く、とてもとても大切な、しま」 が 『家族』 ではないでしょうか。

しかしながら、団欒に結びつく暖かな居間のイメージが、何故か違和感を覚えます。

多くの居間は、がらんどうで、誰もいなくて「取り付くしま」そのものが無いように思えてしまうからです。

こうしたらどうでしょうか。

極端な話、住宅に居間がない、と考えてみるのはいかがでしょう。

友達や、お客さんの居場所は?

ゲームは誰としようか?

テレビはどうするの?

食後は、ほんとはどうしていたい・・・

という風に、居間がなければ、見えていなかった細かな使い方がいろいろ出てきます。

例えば、居間をなくした分、食事のテーブルを大きくしてみるだけでも、友人を食事に誘いたくなるかもしれません。

玄関を、客を招き入れる場所として広くしてみるだけで、雨の日の込み合った朝の玄関でも、いらいらせずに子供と話せるかもしれません。

パソコンコーナーをつくると、子供と何か共有できるかもしれません。本が読みたいなら書斎コーナーやサンテラスもいいでしょう。

また、家事コーナーをつくり子供が宿題もできるようにしたらどうでしょう。寝ころぶための畳コーナー。そういった雑多な住み方が重なり、シンプルな場所やスタイルへと変るとき、「取り付くしま」ができるのかなと思います。 

畳コーナー LDKの一部にある、畳コーナーです。食事が終わったあと、ゴロンとしたり、コタツを置いたりできる「コーナー」なのです。

 

ゼノマの考え方

私達ゼノマの設計物件では、居間といった個室はなるべく作らず、仕切りがなるべくあいまいなLDK型(リビングとダイニングが一体となった室)を薦めています。

そこにあるのは、作り付けのパソコンカウンターや、TV台、大きなダイニングテーブルや、家事テーブルなど。

友人とのお茶を楽しむ為に、対面型のバーカウンターのようなキッチンを作ることもあります。 

 バーカウンター

 中央に見えるのが、バーカウンター型の対面キッチン。

お客さんと向かいあってお茶が楽しめます。

中央付近に見える茶色の壁はコルクボード。

家族の連絡板として使います。

居間といった部屋にこだわらず、あいまいな空間に 『ここでこんなことをする』 と、用途がはっきりとしたコーナーを連続させ、整然と並んでいるイメージ。

もちろん、家族の動線やテレビを見る際の無理のない視線の配置、生活雑貨等の雑多なものがしっかり収まる収納があることは絶対条件。

そしてみせたい物や隠したいものがはっきりしていることも重要。 

居間のイメージ図

 居間のソファーを製作した例です。背面に見えるのは、大容量の壁面収納。

しっかり打ち合わせして、神棚やエアコンまで収まるようにつくっています。

それらがすべてしっかり納まり、初めて住みたい姿(スタイル)としてのコーナーが生まれるのです。 

 

TVカウンターと、薪ストーブコーナー。

配置がはっきりと決まっているので、家具も建物の一部として製作する例が多い。

建物全体のイメージにぴったりの家具です。 

そうやってつくる空間構成は、カッコイイ(形式、部屋、家具)を真似ようとするのではなく、住むスタイルをカッコイイ(形式、部屋、家具)に変えていこうとすること、それがゼノマの仕事だと思っています。

まとめてみます

日本のポストモダンと呼ばれた、建築家の故宮脇壇(みやわきまゆみ)。彼は生前、こう話していました。

「港から港へ立ち寄る旅のように、コーナーからコーナーへと立ち寄る居間は楽しい生活を約束してくれそうだ」

彼の思い描いた居間にあるのは、誰もが夢見る幸せな生活(居間としての本当のありかた)なのかもしれません。 

 TV台のイメージ  TV台の一例。TVコーナーとしての位置づけが明確になっているので、壁も、窓も、視線の集中部分に合わせた「見所」として作ることが出来ます。
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