家づくりコラム

軒の出

軒の出について

あなたの家にもきっと付いているでしょう。

軒、いわゆる庇(ひさし)は木造の建物、家の近所にある神社・寺院等にもみられるように、雨の多い日本の風土の中で、雨などから建物を守る為の重要な役割を担っています。

では、軒の「出」について、重要な意味があるのをご存知でしょうか。

昔の家の軒先は広く、深い。そして風をくみとる。

軒の出

深い軒の出は、日差しを遮り、影をつくってくれます。

「住まいは夏を旨とすべし」とは 鎌倉時代、吉田兼好が「徒然草」の中で記した文言です。

「人の住まいは夏に重心を置いて考えなさい」と解釈されています。

住まいを考えていく上で「夏を旨とすべし」とはどう解釈しているのでしょうか?  

 

夏の暑さ対策を考えた場合、

 

  • 軒の出を深く(最低でも90cm〜)して真上から照りつける日の光を遮る
  • 吹き抜ける風が通るように開口部を大きくとる
  • 昼間も夜も雨の日でも窓を全開で住まうことができるようにする

といった条件さえクリアできれば、おそらく現代でも冷房の必要はほぼ、無いといってもいいでしょう。

軒の出と吉田兼好

「住まいは夏を・・・」と説いた吉田兼好も、夏の軒下や縁側の心地よさをよく、知っていたのでしょう。

 そして冬には、高度が低くなった太陽が直接建物の外壁や縁側を暖めるように計算するのです。深い軒の出をつくった昔の人は、それを知っていた訳です。

軒の出と雨と風

さて、最近の建物に、先人の知恵は生かされているでしょうか。近年の新興住宅地にみられる、ハウスメーカーがこぞって作っているのは高気密・高断熱。

 

建物の形状は外気に接する面積を出来る限り小さくし、低コストがカタチになったような総二階で立方体に近い箱型形状。軒の出は・・・45cm〜60cm。どの建物でもだいたいこのくらい。

短い軒の出 

ある住宅街で見つけた極端に短い軒の出。

 

これでは雨や日差しから外壁を守れません。

 

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これでは日射はもちろん、雨がふって室内がぬれるようでは、窓を開け放して外出なんてとてもとても。

大体において住宅団地だったら、近接した隣に家があるだけで年中、窓は閉めカーテンをかけて・・・というふうになってしまいますね。

でも大丈夫。はやりの高気密・高断熱の建物は各効果(気密性・断熱性)が高いので、

  • 内部の空調された空気が「隙間風」等の外的要因に左右されにくく
  •  24時間換気による最小の換気量で室内空気汚染を回避し、
  • 冷暖房の運転費を省エネルギー性に対し目標とおりに設定できる

という技術的にも、吉田兼好でも想像もつかないような「高性能な」域に達しているようです。

・・・家は高性能な、「入れ物」「箱」。

なんだか人間が、サーモスタットに温度管理された水槽にいる熱帯魚みたいに見えます。

人間にとっての快適環境はおそらく、カビやダニなどの微生物にとっても快適だから、現代人にアレルギーが増えているのかもしれません。

木の効果について

フォルムゼノマはこう考えます

木陰のような軒の出

林道の木陰。

どんなに猛暑だとしても、木の陰は涼しく感じます。

デザインや空調云々よりも、優先すべきは自然の排除ではなく、快適性を取り込む工夫。

地域にある卓越風(常時吹いている風)が大きな軒の出にくみ取られ、開け放した窓から、いつもそよ風のように建物内を吹き抜けている・・・。

どんな猛暑でも、涼しい木陰に入ってほっとできるような感じ。

本来の日本家屋にみられる「快適を自然から取り込める工夫」が、軒の出には込められているのです。そんな家は、住む人にも地球規模的な環境にもやさしく、きっと本当の安らぎを与えてくれるはずです。

その代償がわずかな軒の出だと考えれば、多少のコストアップは納得のいく範囲ではないでしょうか。

 N邸の軒の出  k邸の軒の出
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