暮らすを考える知恵袋
2022.11.05 リフォーム・リノベーション
ワクノウチ再生に光を
こんにちは、フォルムゼノマです。
県内から消えていく建物の中にある、伝統工法とも呼ばれる富山のワクのウチ建築。
それはもともと豪雪や地震対策も考慮した、昔のお金持ちが建てた超しっかりした豪邸です。最近は価値観の観点から、古い住居の価値なんて「ゼロ」。さらに法律で「既存不適格」という烙印を一律に押されるので、全部壊して建て直しね!という事態が一般的に起こっています。
住まいと文化財は違うでしょうが、軽く100年は姿を留める造りを、そんな扱いで処理するのはどうかという記事を書いたのは2007年。幾度か同じような工事をさせて頂いたのですが、年々減少する傾向にあって残念に思っていた矢先、当時の記事を見つけた某大学の先生から「御社のワクのウチ再生手法に興味がある、報道を交えてディスカッションを検討したい」とうれしい問い合わせがありました。
大きな揺れが来ると重い瓦で浮き上がりを押さえ、揺れがさらに大きくなると瓦を落として荷重を減らし、太い柱や貫がたわんだり土壁が崩れることで地震力を吸収、足元を滑らせて地震力を無かったことにする、などというような異次元にぶっとんだ制震・免震技術があったようで、これは現代の構造設計で使われている仕組みを超えていると思います。証明ができない要素に価値を見出すのも無理がありますが、わからないものは「無かったもの」にしてしまうとせっかく作る技術がじき途絶え、いずれ謎の古代技術になります。
今回、ワクのウチに興味を持つ社会的に発言力のある人出てきてくれそうなので、業界に一石を投じてくれたら面白いと思います。
今日「家」は高気密、高断熱な新築へといっせいに舵を切り、これについていけない技術者には仕事がない現代の風潮。ここにワクのウチ建築に長期的な耐久性を見出し、土地と頑丈な建物を格安で手に入れ、改修に1500~2000万程度かけこれをリノベーションする選択肢っていうのも全然アリだと思います。設計施工両方の難易度は結構高いですが、すべて新しい家に囲まれる造成地に住むよりもより広い家に住める上、コストは格段に小さくなります。専門職の職人にも仕事が見いだせますし。
過去の技術を自分たちの未来に生かす考え方です。そのためにもより価値の高いワクのウチ建築を手に入れ、工事して住む。いますぐ予算がなければ最終形態の設計まで行い、暮らしながら少しずつ手を入れて進歩を楽しむのもアリ。そんな富山ならではの面白い住み方が注目され、そして希少な建物や技術が少しでも残ることをブログを書いて祈っております。